密猟問題・象牙問題

2019年8月17日 (土)

【再掲】象牙の需要

ワシントン条約第18回締約国会議が、
8月17日(土)から8月28日(水)まで、
スイスのジュネーブで開催されています。

日本国内での象牙の需要について
5月に書いた記事をもう一度上げておきます。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

象牙に関するツイートが議論を呼んでいるようです。
このブログの象牙に関する過去記事にも、急にアクセスが増えました。

ツイートだけを見て判断している人も多いようですが、
需要がある限り、密猟はなくなりません。
そして、日本にも象牙を必要としている人がいることは事実です。

日本における象牙の需要は、印鑑だけではありません。
三味線の撥をはじめとする、和楽器でも必要とされています。

例えば、歌舞伎などで演奏するプロ三味線奏者の方たちは
象牙の撥を使っています。

しかし、和楽器関係者の方たちが悪いわけではなく、
象牙の入手方法やルートに関する情報が届いていないことが問題であり、
音色や使い心地を再現できる代替品を作るのが難しいことも
大きな障害となっています。

新素材開発の難しさについて
象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その3

関係者の中には「今売られている象牙製品は、
禁止前に輸入されたストックから作られているから合法である」と
思っている方も多いようです。

しかし、三味線の撥は消耗品です。
しかも、どんな象牙からでも作れるわけではありません。

象牙の根元部分には、歯髄腔という空洞があります。

Img_56352
(上野動物園にて撮影)

Photo_2
空洞の部分では作れないので、
その先の部分から作るとなると、
かなり太さのある牙でなければ撥は作れません。

大きな牙を持つ象は少なく、その割合から考えれば、
ストックされた象牙の中で大きな牙の割合もそれほど多くないはずです。

「邦楽ジャーナル vol.329」(2014年6月)に掲載された、
西原智昭氏(WCSコンゴ共和国支部・自然環境保全技術顧問)による記事には、
大きいサイズの撥だと15kgの牙でも1丁作るのは難しく、
20kg相当の象牙が必要になるだろうと書かれています。

撥全体を作るには15kg以上の象牙が必要になるが、
合法的にストックされている象牙全体の平均重量は13kg未満である、
とも書かれていました。

では、どうやって新たな撥を作っているのでしょうか?
これでも、新たな需要がないといえるのでしょうか?

「邦楽ジャーナル vol.329」に記事が掲載された時点では、
まだ和楽器関係者の方たちとの話し合いがあまり進んでいない段階でしたが、
2016年には和楽器関係者も交えたセミナーが開催され、
私も参加させていただきました。

今回、関心を持っていただけた方には、
長いですがぜひ最後まで読んでいただきたいです。

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その1

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その2

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その3

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その4

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その5

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その6

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その7

 

 

| | コメント (0)

2019年8月16日 (金)

『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』を読みました

「積ん読」状態の本が何冊かあったのですが、
やっと読む時間ができました。

特に気になっていた本が、
「本屋大賞 2019年ノンフィクション本大賞」にノミネートされた
『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』
(三浦英之著 小学館)。

5月に発売されたとき、衝撃的なゾウの画像がツイートされたりして、
私のブログにもアクセスが急増しました。
(そのときに書いたブログ記事「象牙の需要」はこちら

日本にはゾウが好きな人が多くいて、
動物園にゾウがいなくなると「また飼ってほしい」と言います。
しかしその割には、野生のゾウやその生息地に関して、
あまりにも無関心ではないでしょうか。

「ゾウが好き」「ゾウを飼ってほしい」と思っているなら、
今、アフリカゾウに何が起きているか知る努力をしなければ、
動物園にいるゾウたちに申し訳ないと思います。

この本を読んでわかったことは、
密猟をなくすためには、
やはり「需要をなくすしかない」ということです。

法律で定めても抜け道はできる。
アフリカには「警察に賄賂は当たり前」の国がある。
だれも象牙を欲しがらない世の中にならない限り、
密猟はなくならないのです。

「第17回 ワシントン条約締約国会議」での
日本政府の対応には呆れます。
他の国が市場を閉鎖しようとしているのに、
日本だけが残そうとして、とても恥ずかしい。

それは、環境省のサイトを見ても同じです。
「象牙等はルールを守って取引しましょう!」
と書かれたページがあり、
この見出しにも呆れてしまいますが、
ページの中にはいろいろ気になる部分があります。

「今後もアフリカゾウの保全を図りつつ、
その持続的な利用を可能とするために、
合法的に輸入された象牙のみが国内で適正に取引され、
それらが厳正に管理されることが重要です。
一人一人がルールを守ることが、違法取引を防ぎ、
アフリカゾウをはじめとする野生生物の保全につながります」

と書かれていますが、
「ルールを守りましょう!」と言って守るようなら苦労しません。


ページ内には、「象牙取引に関するよくある質問」というPDFがあります。

問3 過去に2回特別に輸出入が認められた象牙はどのように得られたものですか?
    密猟された象牙ではないのでしょうか。

⇒過去に2回特別に認められた国際的な商取引で
輸入対象となったアフリカゾウの象牙は、
自然死した個体や人を殺傷した有害獣として駆除された
個体から得られたものであり、
象牙を得るために象を殺して得られたものではありません。

「殺して得られたものでない」と、どうして言い切れるのでしょうか?
賄賂が当たり前で警察も信用できない国から運ばれてきた象牙が
殺されたものでないと、どうやって確かめられるのでしょうか?

問6 象牙の輸入が禁止されているのに、
   国内の象牙の登録本数が増えているのはおかしいのではないでしょうか?

⇒日本には、過去に合法的に輸入された象牙が多数あるため、
それらを取引するに当たって登録が行われること自体は
おかしなことではありません。

近年における象牙の取引ルールの普及や高齢者による財産の処分が、
登録増加の主な理由と推察されます。
(中略)

過去に合法的に輸入された象牙の中には
未だに登録されていない象牙も相当量あると推定されることから、
輸入が禁止されている現在でも、
象牙の登録が継続的に行われること自体は、

おかしなことではありません。

おかしなことではない???

象牙の登録に関しては、2019年7月から厳格化されたようです。
環境省のサイトには、

本年7月1日(予定)から、登録を希望する全形牙の審査は、
規制適用日以前に適法に所有したという自己申告の裏付け証明については、
「第三者の証言」のみでは登録を認めず、
「第三者の証言」及び「第三者の証言を裏付ける補強
(全形牙の放射性炭素年代測定法による年代測定結果等の
客観的に証明できる書類)」を
求めることとします。

では、これまではどうしていたのでしょうか?

朝日新聞デジタル(2019年3月22日付)
「象牙登録、7月から厳格化 採取時期の証明書必要に」
という記事によると、

「これまでは『禁止前から持っていた』などと
知人らが証言する『第三者証明』のみでも登録を認めていた。
そのため、近年は年1千~2千本登録される全形牙の95%が、
申請者の知人らによる証言で認められており、
うその証言で登録された事例もあった」

とあります・・・。

この状態で、「おかしなことではない」なんて。

「日本は密猟や違法取引には寄与していない」などと言うのではなく、
「日本はもう象牙を必要としていません!」と言ってほしい。

和楽器以外で象牙の需要は、どれくらいあるのでしょうか?
日本政府があんなことを言ってまで、象牙を必要とする理由がわかりません。

日本がするべきことは、三味線などの伝統芸能を守るために
一刻も早く象牙の代わりになる素材を開発することではないでしょうか。
そのために、研究者たちをサポートできるように
企業などにも呼びかけることが必要だと思います。

代わりの素材が開発される前に
アフリカゾウが絶滅してしまったら、
伝統芸能を守ることもできないのですから。

厳密にいえば、三味線の撥にはマルミミゾウの象牙が適しているので、
この本にでてくる地域に生息しているサバンナゾウの象牙とは
直結していないかもしれません。

しかし、密猟者にとっては、
「日本は象牙を必要としている」という情報があれば、
サバンナゾウを殺す理由になってしまうでしょう。

アフリカゾウが絶滅してしまう前に、
「日本の技術で、象牙はもう必要なくなりました!」と言える日が
1日でも早く来ることを願っています。

本に登場している獣医師の滝田明日香さんは、
以前、ズーラシアでも講演をされました。

ズーラシアでアフリカゾウの密猟に関する講演 その1(2014年6月)
ズーラシアでアフリカゾウの密猟に関する講演 その2(2014年6月)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って [ 三浦 英之 ]
価格:1728円(税込、送料無料) (2019/8/16時点)


 

 

 

| | コメント (0)

2019年5月13日 (月)

象牙の需要

象牙に関するツイートが議論を呼んでいるようです。
このブログの象牙に関する過去記事にも、急にアクセスが増えました。

ツイートだけを見て判断している人も多いようですが、
需要がある限り、密猟はなくなりません。
そして、日本にも象牙を必要としている人がいることは事実です。

日本における象牙の需要は、印鑑だけではありません。
三味線の撥をはじめとする、和楽器でも必要とされています。

例えば、歌舞伎などで演奏するプロ三味線奏者の方たちは
象牙の撥を使っています。

しかし、和楽器関係者の方たちが悪いわけではなく、
象牙の入手方法やルートに関する情報が届いていないことが問題であり、
音色や使い心地を再現できる代替品を作るのが難しいことも
大きな障害となっています。

新素材開発の難しさについて
象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その3

関係者の中には「今売られている象牙製品は、
禁止前に輸入されたストックから作られているから合法である」と
思っている方も多いようです。

しかし、三味線の撥は消耗品です。
しかも、どんな象牙からでも作れるわけではありません。

象牙の根元部分には、歯髄腔という空洞があります。

Img_56352
(上野動物園にて撮影)

Photo_2
空洞の部分では作れないので、
その先の部分から作るとなると、
かなり太さのある牙でなければ撥は作れません。

大きな牙を持つ象は少なく、その割合から考えれば、
ストックされた象牙の中で大きな牙の割合もそれほど多くないはずです。

「邦楽ジャーナル vol.329」(2014年6月)に掲載された、
西原智昭氏(WCSコンゴ共和国支部・自然環境保全技術顧問)による記事には、
大きいサイズの撥だと15kgの牙でも1丁作るのは難しく、
20kg相当の象牙が必要になるだろうと書かれています。

撥全体を作るには15kg以上の象牙が必要になるが、
合法的にストックされている象牙全体の平均重量は13kg未満である、
とも書かれていました。

では、どうやって新たな撥を作っているのでしょうか?
これでも、新たな需要がないといえるのでしょうか?

「邦楽ジャーナル vol.329」に記事が掲載された時点では、
まだ和楽器関係者の方たちとの話し合いがあまり進んでいない段階でしたが、
2016年には和楽器関係者も交えたセミナーが開催され、
私も参加させていただきました。

今回、関心を持っていただけた方には、
長いですがぜひ最後まで読んでいただきたいです。

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その1

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その2

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その3

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その4

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その5

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その6

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その7

 

 

| | コメント (0)

2017年7月 9日 (日)

NPJ  西原智昭さんインタビュー第1回 「象牙と日本」

コンゴ共和国でアフリカ野生動物の調査研究・保全活動をしている
西原智昭氏のインタビューが
NPJ(News for the People in Japan)のサイトで公開されていました。

約1時間と、ちょっと長いですが、
まだ西原氏の講演を聞いたことがない方は、
ぜひ動画をチェックしてみてください。

マルミミゾウ絶滅の危機と日本の関係について
知ることができる内容となっています。

<ブログ内関連記事>

「三味線でよい音色を出す代償」はこちら

「象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その2」はこちら

「象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その3」はこちら



| | コメント (0)

2016年4月10日 (日)

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その7

象牙問題に関するセミナーの続きです。

最後に、参加者からの質問タイムがあり、
若い方たちも積極的に発言していました。

大学生のときに三味線を始めて、
アルバイトをして楽器を買ったという若者もいて、
次世代へ伝える存在として、貴重な方たちだと思います。

ですが、邦楽の演奏者が、少なくなっているのも事実です。
最初の方で「今の邦楽人口なら、象牙の在庫はあと半世紀はもつ」
と思っている方がいることを書きましたが、
数年前の資料によると、邦楽ブームの頃なら、
1年ももたない量とのこと。

邦楽で使われている象牙の問題が、
あまりメディアに取り上げられないのは、
邦楽に関心を持つ人が少ないせいもあると思います。
(ほかにも、「大人の事情」があるとは思いますが)

象牙や皮の問題を改善していくためには、
もっと、邦楽に関心を持ってもらう必要があります。

邦楽を楽しんでいる若い方たちは、
邦楽の魅力とともに、残していくためには何が必要かなど、
ぜひ、SNSなどで、発信していってほしいと思います。




| | コメント (0)

2016年4月 9日 (土)

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その6

象牙に関するセミナーの続きです。

最後の方で、たぶん演奏家の方だったと思うのですが、
素材は「刷り込み」(インプリンティング)のようなものだという
話をしていたのが印象的でした。

つまり、最初から象牙を使っている人は、
「象牙でないとダメだ」と思いがちですが、
最初から新素材を使っていたら、
それが普通だと思うのではないでしょうか。

琴の場合は、絹糸からテトロンに変わったとき、
それに合わせて、曲も変わっていったそうです。

絹糸のときにつくられた曲をそのまま演奏すると
体に負担がかかる場合もあるので、
テトロンに合った、新しい曲が生まれてきたそうです。

だから、象牙に代わる素材のバチができれば、
それに合った新しい曲も生まれてくるのではないか、
とおっしゃっていました。

話は少し逸れますが、
PCの調子が悪くなってきたので、
最近、新しいPCを買いました。
今まではWindows7だったのですが
新しいPCはWindows10です。

私にとっては、別世界のように違っていて、
データを移しながら、少しずつ慣らしている最中です。
もし、急に7が壊れたら、すぐには使いこなせなかったと思います。

7にあったものが10にはなくなっていたりして、
それをどうするのかを調べたりするのが先で、
まだ、便利になった部分を味わう余裕がありません。

XPから7に変えたときも、
かなり苦労しましたが、今回はそれ以上です。

でも、よくよく考えれば、XPから7になったとき、
7はすごく使いにくいと思っていたのに、
今になってみれば、10より使いやすいと思えるぐらい
7 に慣れたということになります。

いくらこのまま7を使い続けたいと思っていても、
いずれはサポートもなくなり、ソフトも対応しなくなっていきます。

仕事でPCを使っていく以上は、10に慣れていくしかありません。

象牙に代わる新素材も、同じようなことなのではないでしょうか。
もちろん、「芸術」なので、単純に同じとはいえません。

でも、時代や環境の変化によって、変えざるを得ないことがあり、
自分ではどうにもできないことならば、
それを受け入れて、新しいものを使いこなしていくというのは、
どんな分野の仕事でも、皆さん、そうしているのではないでしょうか。

PCに関していえば、私はXPが好きでしたが、
10から始めた人は、XPは使いにくいと思うかもしれません。

バチに関しても、新素材がスタンダードになり、
誰も象牙に見向きもしなくなる日が来るかもしれません。
そのためには、今、動かなければ、手遅れになります。
象牙の在庫がなくなってから動くのでは、遅いのです。



| | コメント (0)

2016年4月 8日 (金)

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その5

象牙問題に関するセミナーの続きです。

皮の話を聞いた後、以前、ズーラシアで開催された、
アフリカゾウの密猟に関する講演で語られたことを
思い出しました。
(ブログ内関連記事はこちら

このとき、どこかの動物園の飼育員さんが、
「アフリカゾウの涙」代表であり、
獣医である滝田明日香さんに
「動物園として何ができるか?」という質問をしました。

野生動物の保護活動をしている方たちにとって、
「動物園」とはどんな存在に見えるのか、
とても興味があったのですが、
その答えとして語られたのは、
「子どもたちが生きた動物を見る機会は大切」ということでした。

写真などで見ただけでは、
「守ろう」とする気持ちが生まれにくいと考えているそうです。

今回、皮のお話を聞いたときも、
やっぱりそうなんだと思いました。

イヌやネコは、人間にとって、とても身近な存在です。
飼っている方たちにとっては、家族のようなもの。
そのイヌやネコの皮が使われることに対して、
とても敏感に反応するのも当然の心理です。

一方で、ゾウというのは、イヌやネコほど身近ではありません。
アフリカでゾウがどのような暮らしをしてるか、
ゾウたちの身に何が起きているかなんて、
知らない人もたくさんいます。

象牙に代わる新素材がまだ開発中であるのに対し、
人工皮は、すでに、商品化のレベルまで仕上がっているということは、
「人々の関心」の度合いが影響していると思います。

やはり、「守ろう」という気持ちを持つためには、
まずは、身近に感じることが必要なのだと思います。

そのためにも、「動物園」には、大きな意味があるはずです。

「動物園」は、人間のエゴからできたものなので、
動物園で暮らす動物たちには、申し訳ない気持ちがあります。

だから「行かない」という方もいるでしょう。

でも、私は、だからこそ、動物園へ行って、
少しでも動物に関心を持ってもらえるように、記事を書きたいと思っています。

今動物園で暮らす動物たちを野生に返すことはできないのだから、
せめて、動物たちからのメッセージを受け取り、
彼らの仲間がどんな状況にあるのかを知る努力をしなければ、
申し訳ないと思うのです。

だから、これからも、記事を書かせていただけるところで、
書き続けたいと思っています。

Photo_45
(ラスクマル君 ズーラシアにて2014年6月に撮影)

 


 

| | コメント (0)

2016年4月 7日 (木)

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その4

象牙問題に関するセミナーの続きです。

今回、バチだけでなく、皮の問題も取り上げられました。

三味線に使われる皮は、ネコとイヌがあるとのこと。
おそらく、この時点で、嫌悪感を抱いてしまう人もいるでしょう。

今回のセミナーでは、新素材の話が中心だったので、
ちょっと調べてみたところ、
少し古いのですが、以前、バックナンバーを取り寄せた
「邦楽ジャーナル」(vol.271 2009年8月号)に、
当時の皮に関する情報が書かれていました。

1973年に動物愛護法が制定されると、
猟師や三味線皮業者への風当たりがきつくなり、
猟師は廃業においやられ、皮師がどんどん減っていったそうです。

皮を使った三味線を弾く演奏家は、
人間国宝になる一方で、皮師は白い目で見られるという
理不尽な構図。

なんとかしようと動いた中で、
殺処分されるイヌやネコの皮を伝統楽器に利用できる法律が
1999年に整備され、奈良県からは調達の可能性がでてきたそうです。

しかし、三味線の皮には3歳以上のオス猫が適しているのですが、
それを見分けられる職員が保健所にはいないとのこと。
また、殺処分されてしまう猫の90%が子猫なので、
楽器に使うことができないそうです。

そのような状況なので、輸入に頼らざるを得ないとのこと。

ここから、セミナーの話に戻ります。

国内で調達できなくなってからは、主に、
タイや中国から輸入しているとのこと。

今回、ネコのことは触れられなかったのですが、
イヌの場合は、食する国もあるわけで、
そういった国から調達していましたが、
それらの国でもいろいろと事情があり、
近年、輸入が難しくなってしまいました。

三味線は、打楽器のようにも演奏する楽器なので、
皮というのは、よく破れてしまうんだそうです。

バチより消耗が激しいので、代替品や新素材の開発が
急務となっていました。

そこで、登場したのがカンガルーの皮と人工素材。

カンガルーについては、頭数の問題など、
触れられていなかったので、その部分はよくわかりません。

ただ、音や使い心地に関しては、かなり好感触のようです。

人工皮については、「リプル」というものが開発され、
すでに販売されています。

セミナーでは、「リプル」を開発した小松屋さん(三味線屋さん)の
代表取締役・小松英雄氏のお話の後、
演奏家の方に弾き比べをしていただきました。

地唄の演奏者は、「二の音が抜けにくいので、そこが課題」、
長唄の演奏者は、「表面がザラザラしているので、
それがツルンとしてくれれば、音にはそれほど問題ない」など、
それぞれの立場で意見をおっしゃり、さらなる改良に期待していました。

人工皮は、コストや耐久性、湿気に対する問題など、
かなりの部分でメリットもあります。

今後、演奏家の方たちの意見を参考に、
改良を進めていけば、さらによいものに
仕上がっていくのではないかと期待されます。

弾き比べをしている動画がYou Tubeにアップされていたので、
ご興味のある方は、聴き比べてみてください。



つづく


| | コメント (0)

2016年4月 6日 (水)

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その3

象牙問題に関するセミナーの続きです。

象牙に代わる新素材については、
とても気になっていたのですが、
少し、希望が見えてきた気がします。

名古屋大学大学院工学研究科教授、
大槻主税先生が開発を進めているとのこと。

先生のお話、とても興味深かったです。
まず、理系の方たちと文系というか、一般の人が話をすると、
お互い、「意味がわからない」と
感じる部分が多いというのがよくわかりました。

例えば、象牙に代わる新素材の話をするとき、

・硬すぎず、適度にしなやかで加工ができるもの
・手になじむもの
・汗を吸うような感覚

という希望を出されたそうですが、
これが理系の先生にとっては「???」だったそうです(笑)。

これを、理系の方向けに翻訳(?)すると、

・無機と有機の複合材料
・多孔質の材料
・親水性の材料

ということになるようです。
(急いでメモしたので不正確な点があるかもしれません)

でも、こうなると、一般の人は「???」ですよね(笑)。

演奏する方にとって、「汗」の問題は、
絶対にクリアしてほしいところです。

演奏中にツルッとすべってしまっては、
よい演奏はできませんよね。

象牙のような素材を作る上で、
とても難しいのが「多孔質」という部分のようです。

象牙は、1ミクロンの穴がたくさん開いているそうで、
そこが難しい部分であり、親水性のポイントにもなるようです。

先生の研究も、かなり進んでいるようですが、
実際、その素材をブロックで作るとなると、
企業のサポートが必要となります。

最後に、西原氏がおっしゃっていましたが、
大槻先生がいくらがんばっても、先生だけでは
新素材を商品化することはできません。

社会貢献したいと思っている企業などに、
資金面をはじめとする様々部分で
先生の研究をサポートしていただくことが必要です。

それがないと、商品化することはできません。

そして、そのような連携を進めるためには、
国全体で、この問題について考えることが必要です。

まずは、どこかの企業が、
大槻先生の研究に関心を持ってくださることを願っています。


つづく





| | コメント (0)

2016年4月 4日 (月)

象牙・皮セミナー「和楽器の響きを次世代に伝えるために」 その2

象牙問題に関するセミナーの続きです。

このセミナーは、動物の保護活動をしている方、
三味線の演奏者、三味線屋さん、
大学で化学の研究をしている先生など、
様々な立場の方たちが集まり、
三味線の皮とバチの現状、そして問題点について
話すという内容でした。

ここに、一番参加していただきたい方たち、
つまり、象牙を扱っている方たちは、
残念ながらご参加いただけなかったそうです。

ですが、なぜ参加しないのか、コメントがいただけたので、
「邦楽ジャーナル」の編集長さんが、それを話してくださいました。

録音不可で、メモもあまり詳しくとれなかったので、
不正確な部分もあると思いますが、
私の解釈も含めて、書いておきます。

まず、象牙を扱っている方たちには、「悪いことはしていないのに、
なぜ、悪者扱いされるんだ」という気持ちがあるようです。

なぜなら、皆さん、「ワシントン条約」のもとで、
ご商売をされているからです。

そして、今ぐらいの邦楽人口ならば、
あと半世紀ぐらいは、今ある象牙の在庫で足りるだろうから、
今、話し合う必要はないと考えている方も多いようです。

そして、おそらく、一番大きな問題は、
「職を失う危機感」だと思います。

もし、ゾウを絶滅させないために、「象牙のバチは使わない」となると、
自分たちの仕事がなくなってしまうと考えているようです。

この3点についての「誤解」を解くことから始めなければ、
話し合いの場にも来ていただけないのだと思います。

「ワシントン条約」があっても、密猟や密売は行われていて、
日本にも闇ルートで入ってきてしまいますし、
密猟や密売をなくすためには、需要をなくすことが必要となります。

ですから、ご本人が「ワシントン条約」のもとで
やっていると思っていても、
密猟や密売と無関係とはいえないのです。

「あと半世紀は持つ」という考えについては、
長いようでも、半世紀なんてあっという間です。

新素材の研究には、相当の年月がかかります。

在庫がなくなってから研究を始めたら、その間、
何を使えばよいのでしょうか?

今からでも、遅いぐらいだと思うのですが、
今始めなければ、手遅れになるでしょう。

そして、演奏家の方たちは、このようにおっしゃっていました。

「素材を1つにしぼる必要はなく、選択肢が増えると思えばよいのです」

いきなり、「今日から象牙はやめて、○○にしましょう」というわけではなく、
まずは、演奏家の好みに合わせて、取り入れるようにすればよい、
ということです。

もし、象牙よりすぐれた素材が出てくれば、
自然に、そちらを選ぶ人が増えていくでしょう。

コスパのよいものが出てくれば、
練習用と本番用を使い分けたりして、
象牙の需要も減っていくでしょう。

そもそも、三味線が日本に入ってきたころは、
バチは木だったのですが、
象牙が登場してから、その良さが伝わり、
次第にそちらを使う人が多くなったのですから、
みんなが一斉に変えたわけではないでしょう。

最後の問題も、大きな誤解だと思います。
もし、象牙に代わるよい素材が誕生したとしても、
そこから、バチに仕上げていくには、職人さんの力が必要になります。

象牙のときと同じようにはいかないかもしれませんが、
その技術を習得して、演奏家の好みに合わせたバチを作れば、
職を失うことはないはずです。

もちろん、新たに勉強しなければならないことも出てきますが、
それは、どんな職業でも同じだと思います。

ですから、象牙の問題を話し合うことが、
失職につながるわけではないのです。
むしろ、失職しないためにも、参加する必要があると思います。

ゾウも守り、職人さんも守り、そして、演奏家の方たちが演奏を続け、
次世代へと邦楽のよさを伝えるためには、
どうしたらよいかを話し合う場が必要なのです。

まずは、これらのことを、象牙を扱っている方たちに、
わかっていただかなければなりません。

ゾウを守りたいと思っている人たちは、
心のどこかで、象牙を扱っている方たちを
「悪者」だと思っているかもしれません。

ただ、必要だからやっていたことが、
環境の変化によって、続けられない状況に
なってきてしまっただけなのです。
しかも、それに関する正しい情報が、
きちんと届けられていなかったのです。

ですから、そのような立場であることも踏まえて、
話し合いを進めることが大切だと感じました。

つづく

その3

 

Photo
(2014年9月 多摩動物公園にて撮影  左:砥夢 右:チーキ)

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

| | コメント (0)