ホワイトタイガー問題

2018年6月23日 (土)

ホワイトタイガー飼育に関する問題 その3

ホワイトタイガー関連のつづきです。

ホワイトタイガーの問題がツイッターなどで拡散されたことで、
ホワイトタイガー誕生の経緯について
今回初めて知った人も多いと思います。

しかし、アメリカではもっと前から
この問題について議論されていました。

そして2011年に、AZA(American Association of Zoos & Aquariums)が
「色や形などの特異性を意図的に作り出すような繁殖を禁止する」
という方針を加盟する園館に対して示しています。

その例として、ホワイトタイガーも挙げられています。

AZAのホワイトペーパーには禁止の理由として、

「現在、飼育下のホワイトタイガーはほとんど、
白い毛色を継続的に生み出すために
近い関係で交配されてきた
アムール系ーベンガル系のハイブリッドである。

このような選択的交配を続けることは
視覚の異常をはじめとする様々な異常や変形の発生につながる」

というようなことが書かれています。

もし、純粋な通常色のベンガルトラ同士から
たまたまホワイトタイガーが産まれた場合は、
これには該当しないと思いますが、
飼育下のホワイトタイガー同士の繁殖は
「選択的交配」に該当するということでしょう。

ということは、アメリカではホワイトタイガーを飼育していても、
AZAに加盟している動物園では
これ以後、ホワイトタイガーの繁殖はしていない
ということになります。

インドで血統管理されている個体以外、
世界各国の動物園にいるホワイトタイガーは
亜種間交雑種のため血統登録されていませんが、
そのほとんどが、不自然な交配を繰り返して誕生し、
アメリカから各国へ送られたホワイトタイガーの子孫といわれています。

それぞれが、過去に繰り返された不自然な交配による影響を受けているので、
親子や兄弟姉妹ほど近くない関係であっても、
障害や病気が生じやすいのかもしれません。

パッと見ではわからないような、
脳内の視覚経路に異常がある個体などもいるようです。

AZAでは、たくさんのデータや文献も確認して
この決断を下したと思われるので、
やはり日本でも考えていかなければならない問題だと思います。

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2018年6月10日 (日)

ホワイトタイガー飼育に関する問題 その2

前回に続いて飼育下のホワイトタイガーについて
その背景にある問題について考えてみました。

1951年に1頭のホワイトタイガー捕らえられ、
そこから飼育下でのホワイトタイガーの繁殖が始まりました。
(詳細はこちら

「ベンガルトラ」の血統登録も
白変種の「Mohan」という個体から始まっています。
そのため、飼育下の「ベンガルトラ」という亜種について考えようとすると
どうしても「ホワイトタイガーの繁殖」問題が絡んできます。

日本で飼育されているトラの中で
アムールトラとスマトラトラは国際血統登録されています。
しかし、ベンガルトラは登録されていないため、
「トラ」と表示したり「ベンガル系トラ」と呼ばれています。
園によっては「ベンガルトラ」と表示してあるところもありますが、
純粋なベンガルトラであることは確認できません。
インド以外の動物園で飼育されているベンガルトラは
ほとんどが亜種間交雑種といわれています。

亜種間交雑種になった理由はいろいろあると思いますが、
やはり「ホワイトタイガーの繁殖」も関係していると思われます。

以前の記事に書きましたが、
白変種の「Mohan♂」とペアになったのは通常色の「Begum♀」。
通常色のベンガルトラとして血統登録された最初の個体はこのBegumです。

そしてBegumは3回出産し、通常色の子どもを10頭産んでいます。
成長できた子どものうちオスは、母親であるBegumと交配させられ、
通常色の子ども誕生させています。

また、Mohanの子ども同士の交配で産まれた子どもの中には、
ホワイトタイガーだけでなく通常色の子どももいました。

この通常色の子どもたちの何頭かが、アメリカへ送られました。
通常色であっても不自然な交配によって誕生したことに変わりなく、
Mohanとも血縁関係にあります。

その後、野生個体同士のペアから通常色の子どもが誕生していますが、
そのほとんどがインド国内で飼育され、国外へは移動していません。

時々、動物商やサーカスに移動していますが、
そのほとんどは、移動後の記録がありません。
ですから血統登録されていない個体の中には、
純粋なベンガルトラなのに記録がない個体もいるかもしれませんし、
サーカスなどで異なる亜種のペアから誕生した個体の可能性もあります。

そしてホワイトタイガーにも、サーカスで飼育されていた個体(出自不明)によって
亜種間交雑種が誕生します。

以前の記事で、Tonyという個体から
ホワイトタイガーにアムール系の血が入ってきたようだと書きました。
アメリカで飼育されているホワイトタイガーの流れには
大きく分けるとMohan系と Kubla/Susie系という2つの系統があり、
Tonyは、このKubla/Susie系です。

Kubla(通常色♂)の両親は野生個体ですが兄弟姉妹関係にあり、
しかも、「アムールトラ」として血統登録されています。

一方、Susie(通常色♀)の両親については不明ですが
サーカスで飼育されていた個体のようです。
Mohanと血縁があるかないかはわかりませんが、
確認できないので可能性は否定できません。

このアムールトラのKubla(♂)とベンガルトラのSusie(♀)で交配し、
さらに、2頭の間に誕生した通常色の子ども同士を交配させた結果
誕生したのがホワイトタイガーのTony(♂)ということのようなので
ここでも不自然な交配が行われています。

さらに、Tony(♂)はMohan系のKesari(通常色♀)とペアになり、
ホワイトタイガーや通常色の子どもを誕生させています。
つまり、またここでMohan系の血が入ってしまうのです。

北アメリカで飼育されているホワイトタイガーの多くは
Tonyの子孫であり、Tonyの登場によって、
近親だけでなく亜種間交雑という問題まででてきてしまいました。

大牟田市動物園のホワイティもTony/Kesari系と思われるので、
そうなると、アムール系の血も入っていることになります。

「ホワイトタイガー」としてではなく
「ベンガルトラ」として「種の保存」を考えても、
純粋なベンガルトラではないということになってしまいます。

日本で飼育されている通常色のベンガル系トラも、
純粋な「ベンガルトラ」であることが確認できない以上
交雑種という扱いになってしまうので
亜種まで厳密に考えた「種の保存」という枠からは外れてしまいます。

ホワイトタイガーだけでなく、
ホワイトタイガーを誕生させる過程で産まれてきた
通常色のベンガル系トラたちがいることも、
忘れてはいけないと思います。

日立市かみね動物園の公式ブログ(平成28年1月28日付)に
ベンガル系トラの繁殖に関する飼育員さんの思いが書かれています。

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(2015年9月 かみね動物園にて撮影)

 

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2018年6月 7日 (木)

ホワイトタイガー飼育に関する問題 その1

以前、「ホワイトタイガーの闇」という記事を書きましたが、
大牟田市動物園の掲示が数日前からツイッターで話題になっています。

ただ、中には背景にある問題を正しく理解していない人もいるようで、
間違った理解のまま広められるのもコワイことだと感じました。

日テレでも取り上げられたようで、
私も日テレNEWS24のリピート放送を見ましたが、
ちょっと違う・・・というか、誤解を招くと感じる部分がありました。

「国内での飼育数が少なく、
よい相手を見つけることが難しいため、
やむを得ず親子や兄弟で繁殖させている」と
説明していましたが、そこは少し違うと思います。

その説明だと、コビトカバなども似たような状況になりますが、
飼育下のホワイトタイガーは、
はじまりが親子での交配だったのです。
そこから、親子や兄弟姉妹間での交配が重ねられてきました。

そのため、多くの個体が
斜視や関節形成不全などの病気を抱えています。

はじまりの「Mohan」という個体以降、
野生個体は捕らえられていないようなので、
国内どころか世界中の動物園を探しても、
まったく血縁のないホワイトタイガー同士がペアを組むことは
おそらくできないでしょう。

詳しくは、こちらの記事に。

ですから、動物園で飼育されている他の動物とは
かなり事情が違うと思います。

大牟田市動物園の公式ツイッターでは、
「ホワイトタイガーについての正しい理解が広まることを願っております」
とツイートしていますが、私もそう願っています。

ブログ内関連記事:ブリーダーから見放されたホワイトタイガー「Kenny」

 

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「Turpentine Creek Wildlife Refuge」に保護されたKenny。
↑「Newsletter 2018年春号」(P.14)に記事があります。

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2018年4月16日 (月)

ブリーダーから見放されたホワイトタイガー「Kenny」

前回につづいて、ホワイトタイガーの話です。

アメリカではトラをペットとして飼うセレブも少なくないようで、
ホワイトタイガーのブリーダーが存在しており、
繁殖に関する問題は深刻です。

2000年には、ブリーダーの施設から保護された
「Kenny」というホワイトタイガーが注目されました。

以下、「Turpentine Creek Wildlife Refuge」
(ターペンタイン・クリーク野生動物保護財団)のNewsletter や
「The Dodo for animal people」というサイトの
「This Is Why No One Should Ever Breed White Tigers」
(2015年12月5日付)という記事などからの情報です。

Kennyは当時1歳半ぐらいでしたが、
顔があまりに一般的なトラとかけ離れていたため、
お金にならないと考えたブリーダーが
ターペンタイン・クリーク野生動物保護財団のスタッフに連絡して
引き取ってもらったようです。

ブリーダーはKennyが
「いつも壁に顔をぶつけている」と言ったそうですが、
そうでないことは明らかでした。

Kennyの顔は、不自然な交配によるものです。
(不自然な交配については前回の記事に)

「Turpentine Creek Wildlife Refuge」にて、
一緒に保護された兄弟のWillieと一般公開されたときの映像。
Willieにも、斜視などがあったようです。
(5分50秒ぐらいから、Kennyの顔がよくわかります)

ブリーダーにとってはお金にならない個体でしたが、
ここに来てからKennyは多くの人に愛されたとのこと。

Kennyはダウン症だという報道が多くあったようですが、
ターペンタイン・クリーク生物保護財団の動物学者、Emily McCormack氏は、
それを否定しています。

運動場を駆けまわり、プールで遊ぶなどして元気に暮らしていましたが、
2007年、腹部に大きな腫瘍ができて手術をしたものの、
2008年に再発し、肺にも転移して他界。

一般的にトラは20年以上生きると言われている中で、
10歳というのは短命です。

しかし死後も、ホワイトタイガーの繁殖について
一般の人に理解してもらうために、
Kennyの存在は大きな役割を果たしているようです。

 

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↑「Newsletter 2018年春号」(P.14)にも、
Kennyのことが書かれています。

「Turpentine Creek Wildlife Refuge」公式サイト→
「Events&Updates」→「Newsletter Archive」で
過去のNewsletterも読めます。

2005年7月号(P.4)にKennyが保護されたときのことや
ホワイトタイガーの繁殖に関する問題、
2008年7月号(P.4)に死因などが書かれています。

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2018年4月13日 (金)

ホワイトタイガーの闇

前回の記事に書いたように、
来園者が激増してじっくり観察できない動物園がある一方で、
地方には、来園者が少なくて困っている動物園もあります。

そのような中で、様々な取り組みを行って
閉園の危機を乗り越えた動物園があります。

例えば、大牟田市動物園(福岡県)は、
園全体で積極的にエンリッチメントにも取り組んでいますが、
2018年3月1日付の公式ブログには
「ホワイトタイガーのことをたくさんの人に知ってもらい、
考えてもらうきっかけになれば・・・」という思いを込めた、
ある掲示に関する説明が書かれていました。

掲示されている内容を簡単にまとめると、

「今後ホワイトタイガーは飼育しません」

ホワイトタイガーは不自然な交配を繰り返したことにより、
その多くが斜視や関節形成不全などの病気を抱えている。
このまま増やしていいのか、みんなにも考えてほしい。

ということです。

(詳しくは公式ブログを読んでください)

もちろん、現在飼育している個体(ホワイティ)は
健康で長生きできるように大切に飼育していくけれど、
繁殖や新たなホワイトタイガーを飼育する予定はない、
ということだと思います。

私も以前、ホワイトタイガーについて調べたことがありました。
でも、あまりに衝撃的だったので、
そのときは記事にする気持ちになれませんでした。

それを伝えようとしている大牟田市動物園は、
「教育」という役割を果たすことや、
動物にとっての「幸せ」について、真剣に考えているのだと思います。

大牟田市動物園の掲示を見て関心を持った方もいると思うので、
私が調べたことも書いておきます。

ホワイトタイガーはベンガルトラの白変種であり、
「ホワイトタイガー」という種がいたわけではありません。
でも今となっては、人間の身勝手さが作り出した、
飼育下でのみ存在する「種」になってしまったように思えます。

かつては野生でもベンガルトラの白変種が確認されていましたが、
もともと数が少なかったのにハンターたちに狙われるなどして
現在では見られなくなりました。

最後に捕らえられたのは1951年と言われています。
インドのRewaにある森で、
ハンターに殺された母トラが連れていた4頭の子トラのうち、
1頭がベンガルトラの白変種でした。
このトラが、動物園で飼育されている「ホワイトタイガー」の始まりです。

Rewaのマハラジャ(王)はそのトラを
「Mohan」と名付けて宮殿で飼育し、
成長したら通常色の「Begum」と交配させました。

しかし、Begumは3回出産したものの、
生まれた子どもはすべて通常色でした。

ホワイトタイガーは、潜性(劣性)遺伝なので、
通常色(WW)×ホワイト(ww)で交配すると
通常色(Ww)になってしまうのです。

「通常色(WW)×通常色(WW)」
「通常色(WW)×通常色 (Ww)」
「通常色(WW)」×ホワイト(ww)」

これらの交配では通常色のトラしか生まれず、

A「ホワイト(ww)×ホワイト(ww)」
B「通常色(Ww)×ホワイト(ww)」
C「通常色(Ww)×通常色(Ww)」

Aなら白変種、
BとCなら通常色または白変種が生まれます。

おそらく野生では、主にCのペアから、
まれに白変種が誕生していたのでしょう。

しかし、人間は「まれに」を待てず、
どうしても、すぐに白変種を誕生させたかったので、
MohanとBegumの間に生まれたメスのうちの1頭、
Radha(Ww♀) とMohan(ww♂)を交配して
4頭のホワイトタイガーを誕生させます。

子トラのうちアメリカの動物園へ送られたMohini(ww♀)は、
MohanとBegumの間に生まれたSampson(Ww♂)、
つまり母親Radhaの兄(弟)であり、
自分とも父親が同じ兄と交配され、
複数回、子トラを誕生させています。

その子どものうちの1頭Kesari(Ww♀)は、
アムールトラとベンガルトラとの交配を経て誕生した
ホワイトタイガーのTony(ww♂)と交配され、
新たなホワイトタイガーを誕生させています。

その子どもたちである
Sumita(ww♀)、Bhim(ww♂)、Kamala(Ww♀)なども
兄弟姉妹で交配され、
ストライプのないホワイトタイガーや
ゴールデンタイガーと呼ばれる毛色の個体も生まれています。
このような毛色が誕生したのはTonyとの交配後、
つまり、アムールトラの血が入ってきてからのようです。

1985年に宝塚ファミリーランドへ送られて
シロタン、シロリンと呼ばれた個体も、
Kesari(Ww♀)とTony(ww♂)の子どもである
Sumita(ww♀)とBhim(ww♂)のペアから誕生したようです。

そして、大牟田市動物園で飼育されているホワイティは、
シロタンとシロリンのペアから生まれたリュウ(ww♂)と
通常色のケープ(Ww♀)から2001年に誕生しました。
ケープの父バースは、Bhim(ww♂)とKamala(Ww♀)の子のようです。

※アムール系の血が入っている個体は
ベンガルトラとして血統登録がなく、
動物園でも公表していないので
シロタンなどの出自については「~のようです」としておきます。

ケープの母親についてはわかりませんでしたが、
日本で飼育されているホワイトタイガーも
かなり近い関係で交配されてきたことがわかります。

現在、世界各地の動物園で飼育されているホワイトタイガーは、
このような不自然な交配によって誕生してきたのです。

そのため、トラ本来の能力がない個体もいるようで、
短命だったり、斜視、脚に障害がある個体も多くいます。

大牟田市動物園は、「人気があるから」と、
このまま繁殖を続けていってよいのか?ということを
来園者にも考えてほしいと、掲示をしています。

非常に難しい問題ではありますが、
考えていかなければならないことだと思います。

私が大牟田市動物園へ行ったときには
まだこの掲示はありませんでしたが、
ほかにもいろいろな掲示がありました。

お金の使い道などもきちんと書かれていると
寄付などもしやすくなりますね。

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(2016年12月 大牟田市動物園にて撮影)

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